第8話 暗闇の底へ
母が目を開けてくれるようになり
視点もたまに合う感じで、左腕と左足に少し力が戻り、首が動き出しました。
でも、人工呼吸器が外れない。。。
自発呼吸も少しずつ出てきてるけど
血液検査でのガス交換の数値が上がらないと言われる。
医師達は口々に
「呼吸の中枢と言われている脳の部分がやられてしまったのだろう」
「呼吸器を外すのはもう難しいでしょう」
呼吸器を付けての検査はできないし
検査したところで処置は手遅れでなにもできない。
一度、近くの大学病院へ転院を試みましたが
「こちらで受け入れてもその状態では何もできないから
1週間で元の病院へ戻るだけですよ」
と言われる。
自分でもあれこれと調べて
現代医学では脳梗塞は起こしてしまったら、脳は戻らない。
発症してすぐに適切な処置がおこなわれると後遺症も少なくて済むのだが
それを判断するにはMRIでないと判断ができない。
入院した病院にはCTしかなく
CTでは発症してから2,3日経たないと画像には映らないそうです。
でも、よくよく調べていくと入院した病院は母のかかりつけ病院。
母は2年ほど前、もうすでに脳梗塞を発症していて、それを知っていたのです。
今回、母は最初に飲み込めないと訴え
診察を受けたら「風邪ですね」と薬を処方されたと。
飲み込めないと訴える人に飲み薬を処方する医師もどうかと思うのですが
病歴からすぐに脳梗塞を疑い、MRIのある病院へ搬送していてくれていたら。。。
でもこの思いは後々間違いであったと思いました。
ただあの当時の私は消灯後の暗い病室で
母はこの体が朽ちるまで、鎖につながれた犬のように
残りの人生をこのベッドの上で過ごさないといけないのだろうか。
そして、まだ3月11日の東日本大震災の余震も続く中
今また大きな地震があれば呼吸器が無ければ生きていけない母を
病院から連れ出すことが出来ない。
もしもの時、私は母を見殺しに出来るのだろうか。
それとも一緒に生き埋めになれるのだろうか。
人工呼吸器の「プシュー、プシュー」と音だけが暗い病室に鳴り響く中
この先どうなるのだろう。
絶望感で深い深い真っ暗闇の底へ、一人落ちていきました。
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